【インタビュー】ミャンマーでマイクロファイナンスの業務改善とデータ活用を目指す!リンクルージョン黒柳 英哲さん


マイクロファイナンスという言葉をご存知でしょうか?

マイクロファイナンスは、「銀行」とほぼ同じ金融サービスを少額で貧困層向けに提供するものです。人々は、マイクロファイナンス機関から、融資を受けたり預金したり、保険に加入したりと、あらゆる金融サービスを利用することができます。

リンクルージョン株式会社の黒柳 英哲さんは、マイクロファイナンス機関向けの経営管理システムを提供する事業をミャンマーで展開しています。実は私が沖縄に住んでいたころ、黒柳さんのトークイベントに参加したことがあり、いろいろとお話をさせてもらっていたのです。その時のご縁もあり、ミャンマーのヤンゴンでどのような活動をしているのかお話を伺ってきました。

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リンクルージョン株式会社 黒柳 英哲さん

ー 黒柳さんはミャンマーでどのような活動をしているのですか?

ミャンマーのマイクロファイナンス機関の多くは、紙と電卓、一部エクセルで業務をこなしています。毎週お客さんのところに行っては融資したり、お金を預かったりするので、記帳や金利計算などの処理もかなりの量になります。

システムを導入するためには海外製の高価なシステムしかないため、ミャンマー国内でシステムを導入しているマイクロファイナンスは1割以下で、なかなか業務効率化ができていません。

私たちは、マイクロファイナンス機関向けのシステムを日本のシステム会社と共同で開発し低価格で提供しています。システムの導入が進むと、マイクロファイナンス機関の業務効率もあがり、より低所得の人に金融サービスを提供できるようになります。また、社会的な評価指標である「ソーシャル・パフォーマンス」でマイクロファイナンス機関の貧困解決の成果を見える化できれば、海外から支援するドナー(寄付者)も増え、資金確保にもなります。

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ー なぜ黒柳さんのシステムは安価で提供できるのですか?

正直、かなりがんばって価格を下げています。というのも、まずは導入してもらわないと意味がないから。まずは導入してもらって、きちんと運用し、貧困層のデータを蓄積していきたいです。どのような家に住んでいて家財を持っていて、どんな仕事をしていて、そういったデータをずっと追っていけば、そこから新しい事業を展開できると考えています。

マイクロファイナンス機関なら、週に1度程度は人々とドア トゥ ドア で接しているので、より正確に情報を収集できます。システムを使えば使うほど、ミクロな情報が集まってビックデータになっていくのです。この点を活用すれば、低所得者向けに開発された商品の製品テストも円滑にできますし、国連や世界銀行にデータを提供して途上国の支援に役立ててもらうこともできます。

今後は、送金機能をつけたり、他の金融機関や通信キャリアと連携するなどして、どんどん広げていきたいと考えています。ミャンマーだけではなく、全世界でシステムを広げていきたいです。

ー ミャンマーのマイクロファイナンス事業者は、どういう人達なのですか?海外の人たちが支援事業として行っているのでしょうか?

地元の人9割、海外の資本系1割という感じですね。マイクロファイナンス事業者も様々で、NGOとか寄付系財団がやっているものもあれば、お金のあるミャンマー人がやっているもの、お金はないけど地道にやっているものなど様々です。大きな母体があるところはある程度、継続資金はありますが、ほとんどマイクロファイナンス機関は資金がなくギリギリの状態で続いている状況です。それが、システム導入があまり進まない理由にもなっています。

ー ミャンマーのネット環境はまだまだこれからという感じがしますが、システムの設計で工夫した点はありますか?

東南アジアの国々に比べミャンマーのネット環境はあまり良くないです。でも、ここ1年でかなり改善されているんです。当初はローカルサーバでシステムを組んでいましたが、今後の環境改善を考慮するとメリットが多いため、クラウドベースで設計しています。ただ、ネット環境が悪い地方に顧客がいる場合もあるので、顧客訪問用のタブレット端末は支店で同期させるようにしています。

ー ミャンマーで現在のような事業を展開するようになったのはなぜですか?

初めてミャンマーに来たのは今から2年前のことです。当時は、あるNGOのプロジェクトに協力することになって、マイクロファイナンス市場の調査のために10日間くらいミャンマーに滞在しました。その時に、マイクロファイナンス機関を運営しているミャンマー人と出会い、システムのニーズがあることを相談を受けたんです。日本に帰って、金融系システムの会社の役員をしている友人にその話をしたところ協力してもらえることになり、本格的にプロジェクトをスタートすることになりました。はじめに相談を受けたミャンマー人が運営するマイクロファイナンス機関にも、プロジェクトに参画してもらっていて、要件定義や試験運用を共同で進めています。

銀行システムをマイクロファイナンス向けにカスタマイズする程度だと思っていたのですが、そう簡単ではありませんでした。マイクロファイナンスならではの要件をいろいろ追加する必要があり、ほぼゼロベースで開発しているような感じになってしまいました。想定していたより開発にかなり時間がかかっていますね。

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ー 黒柳さんはこれまでも、シリア-トルコ国境を訪れたり、寄付文化を日本に根付かせるイベントを運営していたりと様々な活動をしていますが、このような活動をするようになったのはなぜですか?

若い頃、あまり日本人が行かないような中東や中央アジアへバックパッカーに行っていました。そこには、生まれながらにして人生の選択肢が限られてしまっている人たちがたくさんいて「なんて不公平なのだろう」と感じると同時に、やるせなさをを覚えました。それから、社会に出ていろいろな職業を経験しましたが「途上国で何かしたい」という想いがずっとあって現在のような活動をするに至っていると思います。

ー ミャンマーはまだまだ不安定な国と思っている日本人も多いと思います。ミャンマーに滞在して実際どのように感じますか?

ミャンマーは今の調子でどんどん成長していくと思います。ミャンマーの人たちは過去にいろいろ浮き沈みを経験しているので、政治的にはまだ不安定という声もありますが、体感的にはこの成長は衰えずに加速すると思いますよ。

ミャンマーにはいろいろな民族が住んでいますが、少なくともヤンゴンでは民族同士で 表立って争ったりはしていません。お互いの民族や宗教を認め合ってうまくやっていると思います。ミャンマー人は日本人と似ていてあまり本音を言わないので、お互いどのような心情なのかはわかりませんが、イスラム教徒の採用に気を使う企業もあるようです。

ー ミャンマービジネスを展開するにあたって難しかったことはありますか?

ミャンマー人は、世代によっては少し考え方が違って、若い世代はキャリア志向で柔軟な考え方を持っている人が多いです。中堅世代は軍事政権下で育ってきたこともあってか、ビジネス感覚に乏しい人もいるように感じます。ただ、日本も人によって差があるように、ミャンマーも人次第だと思います。

あと、ミャンマー人は日本人に似ていて本音を言わないです。本音と建前というか、できないこともできるって言っちゃう(笑)。ミャンマー人なりの優しさなのかもしれません。

まとめ

ミャンマーで貧困問題の解決に取り組む、黒柳さん。マイクロファイナンス向けのシステムを提供するだけではなく、その先には低所得者層のビックデータの活用という新しい試みもありました。ドア トゥ ドア で人々とコネクションを持っているのはマイクロファイナンス機関ならでは特徴で、いろいろな事業を展開できる可能性があると感じました!

黒柳さん、お忙しい中お時間いただきありがとうございました!

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