【インタビュー】タイでエンジニアから転身、堆肥を変えて高単価なオーガニック野菜を作る、大根田さんにお会いしてきました


唐突ですが私、農業のIT化に漠然とした興味がありまして、今回東南アジアをめぐることになり、何も考えずとりあえず「東南アジア 農業」と打ってみました。すると、

東南アジアで農業

というそのまんまなブログがヒットしました。読んでみるとすこぶる面白くて、過去記事を読み漁りました。どれも自分にとっては新しくて、濃ゆくリアルな情報ばかりでした。

著者のプロフィールを見てみると、

タイのバンコクで日系IT会社に勤めるかたわら、東南アジア(主にタイとラオス)で農業のリサーチや日本の野菜の栽培実験などを行なっています。

とな。これはきっと自分が漠然とイメージしている農業のIT化に関して先んじて取り組んでいる人に違いない!ということであまり深く考えず思い切ってコンタクトを取ると、快くOKをいただけました。

その著者が、今回インタビューをした大根田 浩史(おおねだ ひろし)さんです。

大根田さんは、現在はバンコクの日系IT企業に勤めていますが、来年の3月には退職し、Maruchu Bussan Thaniland Co., Ltd という会社で農業ビジネスを始めるべく、着々と準備中です。

そんな大根田さんに、農業ビジネスを始めるに至った経緯や、どういう農業ビジネスを行うのかを聞いてきました。

(※ 以下 D:はDotsNest編集部の発言、大根田さんは略称させていただきます)

IMG_2033

コンピュータの仕事に携わりながら土日に活動する日々

D: ブログのプロフィールに書いてあったんですが、元々職業的にはエンジニアなんですか?

大根田: 元々はアメリカの大学でコンピュータの勉強をしていました。アメリカへ行く前は東京でweb制作スクールに通いつつアルバイトをしていました。最初はビジネスを勉強しにアメリカの大学に入ろうとしたのですが、英語が難しかったので英語力を必要としなくてお金になりそうなコンピュータを専攻しました。当時は2週間くらいでサービスを作って立ち上げて、月50万くらい売り上げていました。

卒業後は、大学がアメリカだったので日系企業のアメリカ進出の支援(ローカライズ)の仕事を約1年ほどしていました。その後、日本にもどって2,3年は某警備会社で制御系の仕事をしたり、某中古車メーカーの人事部で全顧客情報と全社員情報を組み合わせて最適な人員配置をするようなことをしていました。

D: その後に今の農業ビジネスを行う会社を立ち上げたんですか?

大根田: いや、その後は神戸に本社があるIT企業で働いて、そこが一番長くて4~5年くらい、今もそこでマネジメントの仕事をして働いています。ただ神戸ではあまり開発していなくて、主にタイで開発をしています。最初伸びたのはflashですね。flashは今はもうやっていないけど、ゲームやアニメーションを書いたりしていました。今はflashをjavascript, html5, cssに変えていくようなことをしていたり、某出合い系サービスの開発をしていたりします。そこで唯一の日本人のマネージャーとして働いています。

で、そこで働きながら、土日で各地をめぐって、「こういうの作ってみない?」と言って実験的に野菜を作ってもらったり、日本から資材を運んできて使ってもらったり、あとは地味にどういう野菜作ってるのかを見て回ったりを2~3年やっていました。そういうのが好きで。やっぱり好きでやらないとビジネスきついなと。

「どうして野菜がおいしくないんだろう」から始まった

D: そういう活動を始めたきっかけは何だったんですか?

大根田: どうして野菜がおいしくないんだろう。ってところです。そこからはじめました。タイの中で野菜を作っている場所といえばチェンマイです。オーガニックに対する関心度や葉物野菜はチェンマイ。バンコクの野菜はチェンマイで作っているというイメージがタイの人の中でもありました。なのでいってみようと思って行ってみました。

ちゃーおという、チェンマイの日本人向け情報誌があるんですが、それを立ち上げた方が個人でブログをされていて、その方のブログで農業関係の記事があったので、会いに行ってみたりもしました。

独学で農業を学びながら模索した結果、「自分でやってみよう」となった

D: 野菜作りに関することはどうやって調べたんですか?

大根田: とりあえず本を読みまくったんですよ。例えば、コラートってわかります?バンコクから2~3時間北東にいくと、少し山っぽくなっていいて、そこで日本人がオーガニック農場をもっているんです*1。その方が本をだしていたので、読んだりしました。

そのファームで有名なのはモロヘイヤヌードルですかね。緑色の乾麺なんですけど、それが結構流通していて、MKレストランでもメニューに入っていますし、フジスーパー(バンコクで有名な日本向けスーパー)の近くにファームの直営店があるんですけど、そこにもありました。

それから、いろんな所に行って有機(オーガニック)野菜を食べたんですけど、そこまでおいしくなかった(笑)。そこで「オーガニック = おいしい」というわけじゃないと気づきました。

当初は別に日系企業で働いてもいいかなと思っていたんで、色々な企業の方にコンタクトをとっていました。

で1つ良い商社さんがあったけど、スタートの給料が2万バーツ(日本円で約7万円)だった。それだったら、今はIT企業で働いていて、それよりは確実に多くもらっているので、生活費以外を全部使って自分で農業やればいいじゃんと思ってはじめました。

なので、最初の頃は何もわからなかったので、とりあえず本を読みまくって、その後タイで活躍されている方や会社さんを調べたりして、会いに行って、よければ働こうと思ったけど、お給料が安かったり、方針が合わなかったりしたので、じゃあとりあえず自分でやってみようという感じで堆肥作りから始めました。

土が一番の問題だとわかったので、まずは自分が良い堆肥を作ってモデル農家になり、そのモデルを現地に広げていきたい

IMG_2034

D: どうしてまた堆肥を作ろうと思ったんですか?

大根田: 結局、一番の問題は土だということがわかったんです。米、とうもろこし、キャッサバなどは肥料分がなくても育つため、土に栄養がなくても大丈夫です。元々タイで出まわっている野菜は栄養がなくても育つ作物が出回っています。ただ、野菜の品質を上げる場合、または日本並の品質の野菜をつくる場合は、日本並の土の良さが必要です。そこで、日本の良い土を100%と考えた場合、タイは20~30%くらいなんです。残りの70%を埋めるにあたって、有機物をたくさんぶっこまないといけないと。じゃあどうしようかなーと思った時に、日本の色々なものを試していたので、日本の資材でいいなを思うものあったんですが、それをそのままもってきてもどうしようもないので、似たような資材を作っている会社を探しました。カンボジアやタイの南部で日本の高級な堆肥の発酵機を持っている人がいたので、その方を訪ねたりしました。

その事をミャンマーなど東南アジアでビジネスを展開している友人に話した所、「じゃあもう工場作っちゃおうよ」という話になり、美味しい野菜栽培に適したチェンマイで堆肥工場を作ることになり、今立ち上げているところです。

D: なるほど。ではその工場で堆肥を作って、良い土を現地の農家に売るというビジネスになるんですか?

大根田: はい、売ることももちろんですが、まずは自分たちで堆肥を使り、いい野菜を作って売ってということをしたいなと思っています。

農家って既存のやり方があるじゃないですか。なので、わざわざ新しい肥料や堆肥を買う必要性も感じていないんです。なので、僕らがモデル農家になって、例えば日本の種をつかって、こういう堆肥つくって野菜つくって、業者に売ったらこれくらいいい値段しますって証明したいんです。そしてそのモデルをどんどん広げていきたい。

堆肥も、種も、作り方も提供するし、場合によっては僕らが(農作物を)買ってもいいし、業者も紹介してあげるというところまでしてあげるビジネスをしたいと思っています。

キロ2バーツで売っているところもあれば、60バーツで商売しているところもある

D: 農家さんにしたらすごいおいしい話に聞こえますね。

大根田: 今の農家さんって業者さん次第なんですよ。そこにくる業者さんが、「これ作って」って言われたらそれを作るしかないんです。結局業者の言い値でしかない。例えばキャッサバなんでキロ2バーツ(日本円で約7円)くらいなんです。かたや、キロ60バーツ(日本円で約210円)でパプリカを作っているところもあるんですよ。

D: パプリカめっちゃ高いですね(笑)

大根田: ただあれは、値段の付け方が少しおかしいんです。おかしいというかタイのやり方なんですが、パプリカは元々タイで作っていなくて輸入しているんです。なので、輸送量と関税を入れるとかなりの値段になってくるんですね。で、タイで同じものを作った場合、売値をその値段に合わせてくるんです。

D: キャッサバの話に戻るんですが、農家の人は2バーツと言われて断れないものなんですか?

大根田: そうですね、2バーツというのはタイ全土の話です。

D: タイには農協みたいなものがあるんですか?

大根田: 農協もありますし、収集業者もいるんですね。その収集業者の相場が2バーツ。結局キャッサバは加工しないといけないので、収集業者は加工工場に持っていくんです。で、工場も買値が決まっているんで、中間業者もそんなに抜けるものではないんです。

かたや2バーツ/Kgで売っている人がいて、かたや60バーツ/Kgで商売している人もいる。60バーツなんて日本より多分高いんじゃないですか。

このパプリカの人は、チェンマイでロイヤルプロジェクトの元指導者の人なんですけど。すごい借金してでかい土地と資材を買いまくって、借金を4,5年で返したくらいです。

D: すごいですね…。ロイヤルプロジェクトってなんですか?

大根田: 昔はチェンマイの山岳民族の人たちってマリファナとか作って生計をたてていたんで、それはまずいじゃないですか。それで王室が別のやり方で暮らしていけるようにしましょうということで、少し高級な野菜を狭い農地でも作って売れば良いお金になるでしょう、と始めたプロジェクト*2です。

なので、その実験地がチェンマイの山奥にはいっぱいあるんです。農家はロイヤルプロジェクトと提携すれば、種をもらってちゃんと作れば買ってもらえるんですが、規格が厳しくて品質がいいものじゃないと売れないから大変だという一面もあります。

農家の出すゴミを使って堆肥を作る

D: 堆肥って何からできるんですか?

大根田: 生ごみでも農作物のあまりものでも、有機物があればなんでもできます。

D: 発酵機はいくらくらいするんですか?

大根田: 自分の会社で使うものは1つ1千万いかないですが、1つうん千万の発酵機もあります。それを買ったタイ人の知り合いは使いこなすのに1年くらいかかったみたいです。

日本の発酵機を持ってきてる人もいるけど、それが現地にあうかどうかは1つの課題です。

D: 大根田さんは何から堆肥を作るんですか?

大根田: 僕らが使う発酵機は、普通小学校にある残飯だったりゴミだったりを材料としてつかうんだけど、僕らは農作物を作る側の人間なので、作る作物にとって材料はどれがいいのかを逆算して決めます。

とりあえず微生物に一番必要なのは炭素、その次に窒素で〜など、どれくらいの量が必要かっていうのを逆算していって決めます。あとは、増やしたい微生物によって決めたりします。例えば豆類であれば、空気中の窒素を植物が吸える状態に変える微生物がいます。根粒菌ていうんですが。根粒菌は豆であれば、どの部分でもいいので、それを他の材料と一緒に入れて堆肥を作ります。育てるものによって欲しい微生物が違うので、それらの微生物を育てるのに最適な材料を使います。

D: じゃあ何を元にするかは都度都度変わるんですか?

大根田: 使う人は農家なので、できるだけ農家が出したゴミを使います。ただ、ゴミとはいってもチェンマイではとうもろこしを多く作っています。とうもろこしは、刈り取ったあとに幹や皮などが余るので、それらを使ったり、米ぬかを使ったりします。米ぬかは豚の食べ物にもなるので、高く取引されていたりします。あとは、きのこを作ったあとの廃菌床、おがくずなども使えますね。有料のゴミもあるので、いかに安く材料をあつめて作るかが勝負です。

それこそキャッサバを作っている農家なんてそれだけだとタイの最低賃金(1日300バーツ)に届かないんです。僕らはそういう人たちのモデルになって、一緒に作りましょうということはできると思います。

今は、オーガニック野菜が不足していて、作れば売れる状態なのでチャンスだと思っています。

農業をエンジニアリングする

大根田: それと、農業はエンジニアリングが確立されていないんです。農家の経験と感でなりたっている部分が大きい。変数が多すぎて、言い訳がいくらでも立つんです。それに経験と勘に基づいているので、この土地でうまく行ったとしても、別の土地でうまくやれるかどうかは未知数です。なので、きちんとエンジニアリングしてあげれば、凄いことになると思っています。とてもチャンスに恵まれた世界です。

それに、農業は結果をだすのに時間がかかると言われています。収穫時期にしても、作物によっては年に1回や2回しかありませんので。それは逆に一度よいビジネスサイクルを作リ上げると、他社は参入しずらいということでもあります。

なので、科学的に美味しい野菜を作ることが私の今の目標です。

D: なるほど、これから本当に楽しみです。今日はありがとうございました!

IMG_2046

編集後記

独学で農業を学び、土を変えておいしい高単価なオーガニック野菜を作るモデルをタイで確立し拡大していこうとする大根田さん。そのお話の節々にパッションと行動力を感じました。

“農業は経験と勘”という部分には、エンジニア畑にいる私としては驚きでした…。ただ具体的にどういうデータをどういうふうに取得して、どう活用するんだろう。。という部分に関してはまだブラックボックスですので、これについては今後も調べて行きたいと思います。と、いう旨を大根田さんに伝えてみたところ、こういうのもあるよとご紹介いただきました。

e-kakashi:センサノードで集めた農に関する情報をクラウドに蓄積し、スマフォなどでデータを可視化するサービス。
みどりクラウド:ビニールハウス内の環境を計測するセンサーを搭載したみどりボックスをハウスの中に置くだけで、ハウスの中の状態を離れた所から確認できるサービス。

ということで、大根田さんの行動や、考えているビジネスのプロセス自体が、周りに色々な良い作用を与えていくようで、the・起業家だなぁと感動しました。これからも大根田さんのブログ、要チェックです!


*1) Harmony Life International Co,.Ltdという会社さんのこと

*2) ロイヤルプロジェクト

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です